パワハラと思ったら・・・

 トップページでも記しましたが、「職場におけるパワハラ」とは?ということさえ曖昧というのが実情のため、解決しようとしても手探り状態というのが、相談を通じての印象です。

 しかしながら、多くの場合にはメンタルヘルス不調(適用障害やうつ病)の問題に発展します。

 すると、「診断書」の提出、「休職」の問題となる場合が多く、パワハラを受けた従業員の対応に追われます。

 さらに、残った従業員への仕事の再配分、パワハラの事実の確認やパワハラをした従業員への処分など、対処療法的な対応だけでなく、すでに職場環境が悪化しているのでメンタルヘルス不調を訴える従業員が続発する可能性があり相談窓口等の体制づくりなど、予防措置的な対応も必要でしょう。

 そのため、早期に発見・対応することが、重要です。

 また、労使関係改善の視点からは、問題の抽出が望まれます。

 とはいえ、パワハラの事実やメンタルヘルス不調の事実は確認できたとしても、従業員・経営者ともに、対応方法や解決の程度が分からず、そもそも、複雑に絡み合っていて、どれが問題点なのかが整理できないのが実情です。

 そこで、まずはパワハラの法的な考え方、次に従業員・経営者の双方からどのような法的な対応が考えられるかを確認しましょう。


法的なパワハラの考え方

●パワハラは、セクハラのように法的な定義がなく、「労働基準法」では対応できない。

 パワハラは、パワーハラスメント(諸外国では、モラルハラスメントと表現するようです)の略語です。「ハラスメント」は、「嫌がらせ」ですので、実際に嫌がらせを受けた場合には「ハラスメント」ですし、嫌がらせを受けたと感じた場合にも「ハラスメント」といえる可能性はあるでしょう。

 しかし、「職場のパワーハラスメント」は、事情が異なります。というのは、単に「嫌がらせを受けた、感じた」だけでは「職場のパワーハラスメント」とはいえず、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されているからです。

 では、「職場のパワーハラスメント」は、法的にはどうでしょうか?

 よく混同するのは、「職場のセクシャルハラスメント」と「職場のパワーハラスメント」の2つであり、法的には似て非なるものです。

 「職場のセクシャルハラスメント」は、男女雇用機会均等法で定義されており、セクハラの事実がある場合には行政指導の対象となります(現在、セクハラでお困りの方は、会社の相談窓口、または、各労働局「雇用環境・均等部(室)」に、できるだけ早急にご相談ください。もちろん、当事務所MILKでも相談を承ります)。

 他方、「職場のパワーハラスメント」は、上記の定義は厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の提言によるものであって、法による定義がないため、セクハラのように特定の法律(男女雇用機会均等法)によって対応できるものではありません。

 しかしながら、パワハラの相談者の方からは、『職場でのパワハラだから「労働基準法」によって、会社に注意しろ!!』などのように、「労働基準法」による法的対応を求めるものが多く、非常に混乱している印象があります(もちろん、パワハラを受けている方の事情は理解できますが、「労働基準法」では対応できるものではありません)。

 なお、パワハラの相談内容には、労働基準法での対応ができる内容(長時間労働を強いられ、実際に行っている場合など)やセクハラも含まれている場合もあり、事実等などからより分ける必要があります。

 このように、「職場のパワハラ」には、混乱を生じさせる要素が多く、からまった糸を丁寧にほどくような対応が求められます。

●パワハラには、①加害者と被害者の関係による民法の対応、②使用者と労働者の関係つまり労働契約による労働契約法の対応、2つの法的対応方法があります。

 

 職場のパワハラについて、上記の図表を順序を踏まえて説明した動画です。